こんにちは、思考の種です
今となっては陳腐な疑問。「日本人はなぜ英語を話すことができないのか」について答えようと思います。
そして、それぞれの理由に対して、筆者なりの改善点を示します。
結論から先に述べると、要点は「時間不足」に集約されます。。
1 単純に勉強時間がたりない。
なぜ中高の6年間も英語を勉強して、英語を話すことができないのか??
いや、この問いはそもそもおかしいんです。
中高の6年間しか勉強していないから、英語を話すことができないのです。
時間に換算してみますね。
母語話者は小学校入学までに17000時間以上の英語に触れ、大学に入学するまでに50000時間の英語経験を積むのに対して、日本人は中高で3000時間の英語に触れるだけだと言われています。
そんな10倍以上もの時間の差があるんです!
中高の6年間というが、実際に英語に触れているのは多くてもせいぜい1日2時間程度でしょう。
そんなちょっとの時間では、英語習得は容易ではないです。
ネイティブなんか、それこそ四六時中英語に触れているわけですからね。そんな彼らに少しでも近づくためには、相当の時間を費やすことが必要です。
個人でできる改善点としては、日々の学習で意識的に多読・多聴をこなし、なるべく多く英語に触れ続けることを意識しつづける他にはないでしょう。
英語をかなり高度なレベルで身につけることは、難しいです。
相当の時間がかかります。
でも、それでいてもなお英語学習のコスパはいいと思います。
詳しくは英語学習のメリット8選という記事にまとめます
2 受動語彙は充実しているものの、発表語彙が欠如している
英語を話す、表出する際に用いることのできる語彙を、発表語彙と呼びます。
そして、読む、聞くことで理解できる、意味がわかる語彙を受動語彙と呼ぶことにします。
これはpassive activeで呼ばれることもあります。
単語帳で覚えた知識は基本的には受動語彙です。
聞いたり、読んだりすると意味がわかるんだけど、それを話す、書くとなるとうまく使いこなすことができないという状況に陥ります。
僕自身も含めて、従来の日本の英語教育を受けてきた人は、どうしても受動語彙だけが増えていきがちです。
もちろん、受動語彙の方が発表語彙より多いのは当たり前ですし、どんな発表語彙も、まずは受動語彙になるところからスタートします。
受動語彙をいかに発表語彙にもっていく練習・トレーニングを積むか。
そこが日本人が英語を話すための鍵になってくると思います。
詳しくは、英語をはなせるようになる方法、単語帳の使い方の記事で解説します。
そして、発表語彙に関して大事なことをひとつ。
それは、無意識レベルにまで使える表現を落とし込むこと。
なんども使って、口に出すことで、なにも考えていなくても自然と口からその表現がでてくるまで練習すること。
ここは勉強というよりかはスポーツの練習と同じで、ずっと練習していたドリブルの技が試合で自然に出てくる感覚です。
ここまでして、ようやく使える知識、発表語彙になります。
その際には、コロケーションや根本的な意味を英英辞典や語源情報も活用しながらしっかりと身につけておくこと。
特に、英語を話す、書くときにはコロケーションは必須です。
たとえば、受験生の時に徹底的に叩き込まれる、「〜という経験」という表現。
これもコロケーションごと覚えないと使いこなすことができません。
○ the experience of Ving
× the experience that S V
experienceという単語は、that節とは使えない!!と覚えるのも大事ですが、それ以上に、英語を話せるようになるには、the experience of Ving という形をなんども繰り返し口に出して、無意識レベルにまで落とし込むことが大切です。
このことは、物事を規則で分類して捉えたい性質を持つ人(感覚的に理系に多い)には特に注意して欲しいです。
これは第4文型で、、、とか、そういったメタ知識、物事を説明する知識も確かに大事です。
しかし、それ以上に、He gave me a watch. という文を使いこなし、似たような他の例文を自分で作れることの方が圧倒的に大切です。
説明できることと、使いこなせること間には乖離があります。使いこなせるようになるためのトレーニングをしっかり積みましょう。
3 日本語だけで完結してきた社会 英語の必要性
これは、母国語で社会がある意味完結してきたという日本の利点でもあります。
たとえば大学教育。
母国語だけで基本的な事柄が学べる国って、結構貴重です。
フィリピンなどでは、大学の講義や教科書はすべて英語だそうです。
フィリピン人は基本的に英語がよくできますよね。
欧米でもそうですが、日常的に英語に触れる機会が多いんです。
一方、日本語の場合はどうでしょうか。
今となっては、英語を看板や外国の方向けの情報として英語を目にする機会もありますが、基本的には、訳語やカタカナで置き換えてあるものが多いです。
これって、日本人が外国の文化、言語に寛容で、日本独自のものとして変化・修正を加えて受容してきた歴史に関連しています。
日本語では古来、中国から大量の漢語、すなわち中国語の単語を借用してきました。
ここでは漢語、すなわち中国語と日本語の関係性がほとんどです。
英語と日本語の関係が主体となってくるのは、明治時代ごろからでしょう。
明治維新以降、日本は開国、文明開花に代表される近代化の波に飲まれていました。
明治新政府は富国強兵、殖産興業、脱亜入欧を推進していました。
当時の明治政府にとって、近代化とは欧米化そのもの。
そこでお雇い外国人を招聘したり、留学生を派遣したりしたわけです。
そんな時、日本の優秀な人材たちは、西洋語を日本の漢字を組み合わせて表現、翻訳することに成功します。
福沢諭吉が中国の古典に登場する語「経世済民」=「世の中を治め、人民の苦しみを救うこと」から、economyを「経済」と、西周がscience を西洋から新しく日本に輸入された諸学問が、旧来の漢学や国学とは違って、専門上細分化「分科」していることから、「科学」と、philosophyを 中国の「志希賢」という言葉から「哲学」=「知を愛する」と翻訳したことは有名です。
これらには諸説があります。特に、福沢が経済という語をつくったという説より、普及するきっかけだったという説が主流です。
漢字をパズルのように組み合わせて外国語を翻訳する。
あるいは、カタカナを用いて外来語として母国語に取り込む。
こんな日本語の柔軟性・汎用性のおかげ(せい??)で、少数のエリート層を除く大半の日本人は英語を日常的に用いることなく、母国語で完結する社会を生きてきました。
森有礼などが英語を母国語にしようとする「日本語廃止論・英語採用論」を唱えたこともありましたが、現在でも日本語が我々日本人の母国語です。
言語の歴史を追ってみると、おもしろいですね。
そして、今でも廉価な文庫で代表的な古典や名著を日本語で読むことができます。
これって本当に珍しいことですし、我々の先祖に感謝すべきことでもあります。
では、現代においてはどうでしょうか。
アジア勢力の勃興とは裏腹に、人口減少に拍車のかかる日本。
変化するパワーバランスを目の前にして、もはや英語の必要性は自明となっています。
日常的に英語に触れている欧米、アジア諸国とは違って、日本では英語の習得は難しい。
だからといって、あきらめてはいけない。正しいやり方と、圧倒的な学習量で、英語は必ず身に付きます。
4 技能学習のバランスが悪い。音を基盤とする義務教育を早急に行うべし!
上記のように、幕末明治初期、西洋近代の学術思想を日本に取り入れるにあたって、翻訳は重要な役割を果たしました。
その中で、伝統的な文法訳読法、構文解析技術は見事なまでに機能しました。
当時においては、話す、聞くというよりも、読む、書く(翻訳する)ことが日本社会において重要だったことはいうまでもありません。
その名残なのか、今の日本の英語教育は、聞く、話す技能をないがしろにして、読む、書く技能の習得に傾斜するきらいがあります。
もちろん論文を読み書きする力、古典を原典で読みこなす力は必要ですし、そのための文法訳読法や構文解析技術は必須の技術です。
その面では日本の英語教育は十分に機能してきたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、英語を表出する技能、言語として自然な喉を震わせてコミュニケーションをとるという技能が軽視されてきました。
これは相当もったいない。
音声を基盤とする英語学習の重要性はいろんな記事で触れてきました。
また独立した記事として音声の重要性は記事にしたいと思います。詳しくはそちらを参考にしてください。
もっと4技能をバランスよく学習しないと、聞く、話すこと、すなわち英語を使いこなすことができないし、逆説的ですが、読む、書く技能にとっても効率が悪いのです。
簡単にいうと、音声は英語の基盤・土台なのです。
基盤がしっかりしていないのに、上の技能を習得しようとしても効率がわるいですよね??
もっと読む技能を向上させるためにも、しっかりと聞く力を伸ばすことが大切だし、もっと自然な英語を書くためにも、流暢に英語を話せることが必要なのです。
言語においては、文字情報よりも、音声情報の方が優位です。
それなのに日本は音声をないがしろにして、文字ばかりを学習してきました。
これは人間の自然な言語習得の過程に反しています。
これは、プロサッカー選手になるために、ずっとオーバーヘッドの練習をしているようなもの。
まずは基本的な蹴る、止める技術を磨くべきなのに、いきなり難しい技を練習しているのと同じくらい学習順序を間違えています。
個人でできる改善点としては、自分で意識的にリスニングの練習をたくさんすることが大事です。
1日2時間を毎日リスニングに費やす!くらいの気持ちで取り組みましょう。
リスニングの勉強法は詳しくはこちらの記事にまとめています。
リスニングと発音はまさに表裏一体ですから、発音練習もしっかりとやってくださいね!
5 英語からかけはなれた日本語 語族、発音、音、文法
これは問題というよりかは、事実と言った方が良いかもしれません。
語族という言葉を聞いたことはありますか??ここからは豆知識だと思って読んでみてください!
世界には251もの国があり、手話も含めて7139もの言語があります。
この数は変動していますし、毎月2言語が消えていくという説もあります。
ちなみに、そのうち文字のある言語は約750個、文字がない言語が約6200語だと言われています。
ここからも、言語にとって音声が重要で、文字が副次的であることがわかりますね。
簡単にいうと、語族とは、言語の家族みたいなもの。
同じ語族に属する言語は、ルーツが同じであることが多く、基本的に似たような言語になります。
世界中の言語は超大まかに分類すると、6つの語族に分けられます。語族のなかで、語派という概念にまた細分化されます。
細かくみていくともっとあります!
中国語を含むシナ・チベット語族、インド・ヨーロッパ語族、英語を含むゲルマン語族などが有名でしょうか。
日本語は日本語と琉球語を含む日琉語族、朝鮮語と日本語を含むアルタイ語族に含まれるという説がありますが、その実態は不明です。
一方、英語はゲルマン語族に分類されるものの、英語の語彙の6割ちかくはフランス語もしくはラテン語からの借用語です。
それには言語や社会の歴史がからんでいます。
同じ語族に分類されるドイツ語、スペイン語や、単語に多く使用されているフランス語話者にとっては、発音、文法、語彙といったさまざまな面で、母語と英語が似ているというメリットがあり、英語習得は日本人に比べて容易です。
スペイン語やドイツ語を勉強していると、これ英語そのままじゃんっ!と何回もツッコミたくなります。
逆に、日本人にとって韓国語は勉強しやすいです。
韓国人で日本語がとても上手な友達がいるのですが、その子は日本語は簡単だと言っていました。
もちろん彼女の努力があってこそそこまで上達したに違いないのですが、文法が似ているので勉強がしやすかったと言っていました。
日本語にとって、英語は一言でいうと、遠い言葉。
だからこそ、日本語と英語の違いを意識的に学習することが大切です。
発音も息の量から、喉の使い方など、なにからなにまで違いますし、そもそも音の数も違います。
「ら」に「ra」と「la」が対応したり、そもそも「ファ」と「fa」は全く違う音であったりします。
文法、発音はしっかりと学習しておきましょう!
6 日本人の性格??
これはステレオタイプ的な捉え方になってしまうかもしれないので、注意が必要ですし、日本人の性格は「○○」が多いという話を聞くと、日本人である我々は自然とそうなってしまうという人間の特性があるので要検討です。
よく、日本人はシャイだから英語がうまく話せないんだ!なんて主張をする人がいますよね。
確かにその面も否定はできないのかなと思います。
代表的な例としては、アメリカの女性人類学者ルース・ベネディクトが書いた著書「菊と刀」で触れているように、西洋が罪の文化であるのに対して、日本は「恥」の文化であるということ。
古来から日本は農耕社会でした。
そんな中では人々の協力、すなわちムラの団結が1番大切。
ルールや掟を守らないやつには、村八分をして、ムラから追放します。
そこで、他者の非難や嘲笑を恐れて自らの行動を律するという日本人の心情が形成されてきたのです。
ベネディクトの指摘には批判もありますが、現在では外国人研究者から捉えた日本研究の成果として捉えられることが多いです。
西洋でも、変人を狂気とみなして社会から追放するといったことは歴史上繰り返されてきました。
フロムが指摘するように、近代になって狂気は文学の中に回帰してくるのですが、、
それはそれとして、やはり日本人が英語を話す時には、「恥ずかしい、他人の目線が気になる」という気持ちがつきまとうのも事実です。
発音がうまくないから、流暢に話すことができないから、、といった理由で話すことを躊躇してしまいます。
でも、話せるようになるためには、話さなければいけないことは事実。
改善策としては、恥じない実力をつける、とか、誰もあなたのことには興味がないよ、とか、そんな改善策とは言えないような案は容易に思いつくのですが、いかんせん抽象的で、具体的な改善策とはいえないでしょう。
1つ現実的な案としては、virtual空間の利用があげられます。
VR上でアバターを介して会話するのです。
アバターは自分であると同時に自分でないという矛盾した状況を作り出すことができます。
簡単な例としては、ゆるキャラのマスコットを想像してみてください。
例えば、くまモンの着ぐるみを着たおじさん。
普段、そのおじさんは愛くるしいポーズやダンスはしないに決まっていますが、くまモンの着ぐるみを着ると、恥ずかしがらずに踊ることができます。
VR上でも同様の論理で英語を話す際の恥を解決することができるのです。
VR上で恥ずかしがらずにどんどん練習する。
自信がついてきたら、現実世界でもチャレンジする。
そうやって、話す力を伸ばすことができます。
VRと英語教育の可能性については、またべつの記事にまとめます。
VRは世界を変えます!!本当に!
まとめ
この記事では、日本人が英語を話せない理由6つと、おおまかな個人でできる改善策について話しました。
- 単純に勉強時間がたりない
- 受動的語彙は充実しているものの、発表語彙が欠如している
- 日本語だけで完結してきた社会 技能学習のバランスが悪い。
- 音を基盤とする義務教育を早急に行うべし
- 英語からかけはなれた日本語 語族、発音、音、文法
- 日本人の性格??
できない理由がわかったら、あとは、いかにしてできるようにするか。
日本人にとって、英語の習得が難しいなら、逆に英語ができれば貴重な人材になるということでもあります。
根性論で片付けてしまうのはスマートではないかもしれませんが、
結局のところ、英語学習とは、いかに量を担保できるか、いかにたくさんの英語に触れることができるか
が鍵になってくると確信しています。
お互いに英語学習、がんばりましょう!
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